前回の記事で、歯周病が口の中だけの問題ではなく、全身の健康と関わっていることをお話ししました。その中でもとりわけ研究が進み、はっきりとしたことがわかってきているのが、糖尿病との関係です。
今回は、この二つの病気がどう影響し合うのかを、少しくわしくお話しします。
糖尿病があると、歯周病は起こりやすくなります
まず、糖尿病から歯周病への影響です。
日本歯周病学会がまとめたガイドラインでは、糖尿病のある方は、そうでない方に比べて歯周病にかかる頻度が高いとされています。これは1型・2型どちらの糖尿病でも同じです。
さらに、かかりやすいだけでなく、進みやすいこともわかっています。糖尿病を長く患っている方ほど、歯を支える組織が失われやすい傾向が報告されています。
分かれ目になるのは、血糖のコントロール
ここで大切なのは、「糖尿病だから必ず歯を失う」ということではない、という点です。
ある研究では、血糖のコントロール状態を表すHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という数値に注目して、5年間の経過を追っています。その結果、この数値が高い状態が続いていた方では、歯を支える組織の失われ方や歯を失うリスクが大きくなっていた一方で、コントロールが良好に保たれていた方では、そうした差が見られなかったと報告されています。
つまり、糖尿病そのものよりも、血糖がどれだけコントロールされているかが、お口の状態を左右するということです。
なお、HbA1cの目標値は、年齢やほかのご病気の有無によって、お一人おひとり異なります。ご自分の目標がいくつなのかは、内科の主治医の先生にご確認ください。
そして、逆向きの効果もあります
ここからが、近年とくに注目されているところです。
歯周病の治療が、血糖のコントロールにも良い影響を与えると報告されています。日本歯周病学会のガイドラインでは、この点について、糖尿病のある歯周病の患者さんに対して歯周病の基本的な治療を行うことを強く推奨すると結論づけています。
「糖尿病があると歯周病が悪くなる」だけでなく、「歯周病を治療すると糖尿病にも良い方向に働く」。この二つは、互いに行き来する関係にあるのです。
もちろん、歯科の治療が糖尿病そのものを治すわけではありません。あくまで、内科での治療という土台があってこそのものです。ただ、お口のケアが、その土台を支える一つの要素になり得る——そう考えていただけたらと思います。
年齢を重ねてからでも、遅くはありません
「もう年だから」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ガイドラインでは、高齢の糖尿病の患者さんについても検討されています。血糖のコントロールが不十分だと歯周病は重症化しやすい一方で、歯周病の治療そのものは高齢の方にもきちんと効果があり、その効き方は血糖のコントロール状態によって変わる、とされています。
年齢を理由にあきらめる必要はない、ということです。
通う間隔を、少し短くする
歯周病の治療が一段落したあとは、定期的なメンテナンスに移ります。一般的には3か月に一度、年4回というペースが多く用いられます。
ですが糖尿病のある方については、ガイドラインの中で、この間隔をもう少し短くすることが推奨されています。歯周病が再発しやすい状態にあると考えられるためです。
当院でも、糖尿病で内科に通われている方には、通院の間隔についてご相談させていただくことがあります。回数を増やしたいからではなく、再発のサインを早く見つけるためです。
内科と歯科、両方から
糖尿病で内科に通われている方は、ぜひ一度、お口の状態にも目を向けてみてください。逆に、歯ぐきの状態がなかなか良くならないという方は、健康診断の結果を一度見直していただくとよいかもしれません。
二つの病気は、別々のもののようでいて、実はつながっています。だからこそ、内科と歯科、両方から診ていくことに意味があります。
R歯科医院は、1986年の開業以来、鎌倉市台のこの地で予防を大切にした診療を続けてまいりました。大船・鎌倉で、持病がありながら歯のことも気になっているという方は、まずはお気軽にご相談ください。内科でどのような治療を受けておられるかを教えていただければ、それに合わせた進め方をご提案します。
参考
- 日本歯周病学会「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第3版2023」
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
- 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
